なぜ庶民はネオリベを支持したか?

 ネオリベが魅惑的な思想として支持された90年代を、かつてネオリベを支持した人間の一人として紐解く作業をしているが、今回はなぜ広くネオリベが庶民に支持されたのか考えたい。
 ネオリベの利点として挙げられるのが、「コストの安い社会を実現する」というものだ。
 今でこそ、低コスト→低賃金→低消費 とコスト削減が負のスパイラルを起こし、経済にマイナスの影響を与えることが知られるようになったが、90年代はそのような指摘はほとんど為されていなかった。
 そもそもネオリベ社会においてはグローバル化により労働コストが低減化されると同時に、自由貿易によって原材料や一次産品のコストダウンが起こる。90年代においては後者のみ強調され、ネオリベは物価を下げ庶民の暮らしをラクにしてくれる救世主だと思われていた。都市部の低所得者は農家や商店街を保護し高コスト体質を維持しようとする自民党に愛想を尽かし、これを壊してくれるネオリベ野党を支持した。
 2000年代も都市部の低所得者ネオリベ信仰は止まず、自民党ネオリベ化すれば、有権者自民党支持に回帰した。この頃にはネオリベが物価だけでなく賃金も下げることが幾分か知られるようになってきたが、ものわかりのいい人は、賃金が下がっても、物価がそれ以上下がれば、生活は豊かになるからいいと達観していた。
 未だに、都市部の低所得者ネオリベを崇拝している輩がいるが、原油高と世界的な食料価格の上昇で、貿易の自由化による価格低減余地は限定的になるであろう。むしろネオリベの労働コスト低減圧力の方がより目立つようになる。
 今後はネオリベは庶民に敵視され、企業経営者やエリートビジネスマンだけが支持する思想になるであろう。ネオリベを是としてきた都市部選出の政治家も、選挙で勝つために自論を曲げることを考えなければならない状況になるであろう。