航空機と新幹線はライバルなのか?

 昨日デンマークから日本に戻った。フィンエアーで朝10時に着くフライトを予約して日曜にはゆっくり休むつもりだったが、生憎ストライキでパリ経由で夕方着く羽目になった。お陰でシャルル・ドゴール空港を見学することができた。この空港はかなり以前に利用したことがあるが、TGVが空港ターミナル直下に乗り入れているのには驚いた。
 空港からのアクセスについては日本もかなり進んでいる部類に入ると思うが、決定的に違うのは高速鉄道鉄道は乗り入れている点である。日本は空港に近い大都市を結ぶ鉄道はよく整備されているが、空港に高速鉄道を乗り入れる発想がない。欧米で高速鉄道が乗り入れる空港は、ここに限らず、ドイツのフランクフルト空港やオランダのスキポール空港など事例は増えている。
 フランスの地方空港はパリから離れた地中海や国境付近の都市にはあるが、中央部にはほとんど空港がない。多くの都市ではYGVをハブとしてパリの空港で航空機に乗り換える。
 そもそも日本の交通行政は、90年以降規制緩和の掛け声の下、交通機関同士を競わせることばかりに注力してきた。確かに航空機と新幹線、鉄道とバスを競わせることで、サービスの向上、運賃の値下げがはかられた部分がある。しかしそれが本当に消費者の利益、ひいては日本の国益になっているのだろうか?
 名古屋などは、羽田や伊丹に行く空路がないため、路線が廃止されると、新幹線と空路という組み合わせでの移動を余儀なくされる。仙台や新潟など羽田便の飛ばない空港も、地方路線の廃止が相次ぐ中で、空路乗継で行けない都市が増えている。仮に羽田空港に新幹線が乗り入れていたらどんなに便利だろうか?
 もう交通機関同士を競争させるという発想はほどほどにして、交通機関のそれぞれの特徴を生かした役割分担を前提にした交通体系デザインを国が描く時期ではないか?以前ならば、自由主義者は国が介入することを嫌ったが、大阪府橋下知事や猪瀬東京都副知事や前原前国交相など自由主義的な政治家も交通に関しては行政が主導することを好む傾向がある。前原前国交相は新幹線の羽田乗り入れを低減したことがあるが、東京から新幹線で羽田に行ってもモノレールとさほど時間が変わらないといったように世論の方に頓珍漢な無理解が目立った。
 高速鉄道網も国内線と同じ土俵で考える発想を日本に定着させるのはなかなか難しい作業かもしれない。