健全なナショナリズム?

「他国旗焼くのは偏狭」 安倍氏中韓を暗に批判

 安倍晋三官房長官は4日、福岡市での自民党九州ブロック大会で、対アジア外交に関連し「健全なナショナリズムと、偏狭なナショナリズムのどこが違うか。偏狭なナショナリズムは、国旗を振って国歌を歌うことでなく、外国の国旗を焼いて、破ることだ。こういう国に日本はなってはいけない」と述べた。小泉純一郎首相の靖国神社参拝や歴史認識問題などに対する中国や韓国国内のこれまでの動きを暗に批判した発言だ。
 自らの靖国神社参拝に関しては「外交、政治問題に発展させようとするよこしまな人たちがいるなら、今何も宣言する必要はない」と強調、参拝するか否かを事前にも事後にも明言しない姿勢をあらためて示した。
産経新聞(09/04)

日本のナショナリズムは中国や韓国のナショナリズムと違って健全で美しい。私もそう信じたいところだが、果たしてそう言いきれるであろうか?既に日本のナショナリズムは相当劣化してきており、外国の悪口を言えば愛国者的なレベルの低い偏狭なナショナリズムに既に日本でも萌芽しているが、その辺はどうもスルー?
 日本の保守派の政治家も知識人も、この辺が実に甘い。偏狭なナショナリストさえも自分の本を買ってくれるプロスペクトとして大事にしたいのであろうか?質の良し悪しに関係なく、国民の右傾化を単純に歓迎しているのであろうか?安倍氏も「美しい日本」と美辞麗句を並べるのは大いに結構だが、偏狭なナショナリズムに陥る若者に対し、「お前ら、そんな下らないナショナリズムじゃなくて、もっと美しい日本を語ろうぜ」とかぐらい言えないのか?放置していたら、どんどん「醜い日本」になってゆくという危機感はないのか?

日本の伝統、文化「学校現場で植え付けを」 小坂文科相

 小坂文部科学相は2日、教育基本法改正案の「愛国心」に関連し、「日本の伝統、文化、芸術、音楽について、学校現場でしっかり植え付けていくことが必要だ」と述べた。青森県八戸市で開かれた「教育改革タウンミーティング」で、会場からの質問に答えた。
 閉会後の記者会見では、「教育改革について内閣がリーダーシップをとるという意見があることは共鳴できる」と話した。
 さらに、義務教育費国庫負担金の負担率が2分の1から3分の1に引き下げられたことで、「都市と地方との格差が生じる」と指摘。同法案の早期成立とともに教育振興基本計画の速やかな策定を目指し、「地方自治体に必要な教育予算を確保するよう、対話を通じて働きかけたい」と述べた。
朝日新聞(9/2)

 そもそも「植えつける」という態度が気に食わないのではあるが。政治家という職業の人間はそうしてこうも押し付けがましいのか。それを言っていても論議が深まらないので、本題に入る。
 私も愛国心をタブーにするのは、かえって免疫力を低下させ、偏狭なナショナリズムに感化されやすくなるので危険だと思うし、国際人としてもナショナルな文化を身に付けることは重要であり、そういう教育の機会を設けること自体は重要であると思う。
 確かに日本の文化教育は明治来の西欧コンプレックスから抜け出せず*1、自文化を卑下する傾向にあったのは確かで、見直すことは重要だと思う。ただ勢い余って自文化至上主義にならないよう、ある程度異文化と相対的に見る視点も養うことも必要であろう。
 そんな中で自然に自文化への愛着が涵養され、健全なナショナリズムが育まれることを期待したいのだが。世の中には偏狭なナショナリズムにも寛容な人間と、ナショナリズムをタブー視する人が分立していて、どうも健全なナショナリズムを育もうという人が見当たらないのは気のせいか?

*1:戦時中でさえ