年金問題でなぜ安倍総理の責任が厳しく問われなければならないのか。

  安倍総理は運が悪い、彼は悪くないのに社会保険庁職員の怠慢の罪を被らされていると言う人があるが詭弁である。百歩譲って安倍総理が寝耳に水状態で降って湧いた話であったのならまだ同情の余地はあるが、そうではないことは明らかで、彼には問題を知っていて放置した不作為の罪が厳しく問われなければならない。
 ことに年金問題に関しては産経新聞がいい仕事をしている。6/16に掲載された記事を引用させていただく。

【検証 年金攻防】(下) 社保庁に官邸激怒 犯人捜し…国民の目厳しく

 5月27日夜。地元・和歌山県に滞在していた世耕弘成首相補佐官は、28日の帰京予定を急遽繰り上げ、羽田行きの飛行機に飛び乗った。日経、毎日両紙が28日付朝刊に、内閣支持率が急落し過去最低となったという世論調査結果を掲載するとの情報が入ったからだ。
 急落の原因は、社会保険庁年金記録紛失問題以外に考えられなかった。「しまった。手を打つのが一歩遅れた…」。世耕氏は歯ぎしりした。          
 さかのぼって5月24日。首相官邸では、この問題をめぐる極秘の対策会議が開かれていた。
 すでにテレビのワイドショーやニュースは特集を組み、社保庁の理不尽な対応を連日報道していた。安倍晋三首相を囲んだ塩崎恭久官房長官井上義行首相秘書官らは「厚労省の説明と実態はずいぶん違う」「官邸が主導して早急に対策をまとめないと大変なことになる」と進言した。首相は深くうなずいた。
 首相は翌25日の衆院厚生労働委員会で「時効で消滅した部分を回復し、救済する特別立法の制定に向け、政府・与党一体で努力したい」と述べた。領収書などがなくても年金納付した可能性が高い人への救済措置を講じることも明言。同時に社保庁は「年金記録への新対応策パッケージ」を発表した。
 しかし、年金記録の統合期限は明示されず、過去の年金納付を示す給与明細などがないケースへの救済策は「できるだけ早急に策定する」、支払期限の時効は「政府・与党一体となって対応する」とお茶を濁した。
 当然、国民の年金不信が、この程度の救済策で収まるはずもなかった。案の定、各種世論調査内閣支持率は急落。松岡利勝農水相の自殺という要因も加わり、政権は窮地に追い込まれた。
 「25日の首相の国会答弁に合わせて、首相官邸で具体性のある救済プランを発表すべきだった」
 世耕氏は悔やんだ。

 年金記録紛失問題は首相官邸にとって古くて新しい問題だった。
 民主党長妻昭衆院議員がこの問題を最初に国会で追及したのは昨年6月。まだ小泉純一郎前政権だったが、当時の首相秘書官らは「年金未納問題よりもずっと深刻だ」と考え、ひそかに対応策を協議していた。
 昨年9月に安倍政権に代わり、この話はうやむやとなり、顧みられることは少なくなったが、5月28日の内閣支持率急落で、政権は国民の怒りを思い知らされることになった。
 ――<中略>――
 こうした自民党の姿は、だれかを「犯人」に仕立て上げなければ国民が納得しないという強迫観念に支配されているかのようだ。犯人は歴代厚相か社保庁長官か。それとも社保庁職員を抱える野党支持労組か。
 だが、こうした議論は、「責任のなすり付けあいをしていると、国民からみられる」(自民党幹部)との懸念も出ている。責任追及と同じくらい、いやそれ以上に大事なのは「消えた年金」を国民の手に取り戻すことだ。その仕事に懸命に取り組めば、政府は失った信頼を取り戻せるかもしれない。年金問題取材班)

 年金の記録漏れ問題は急に振って湧いたような話と思われているが、長妻議員によって昨年の6月から追求されている。この頃マスコミは社会保険庁が納付率を上げる為に、納付者に無断で免除申請を出し分母を小さくして納付率が上がったように見せかける不正免除が発覚し、しきりに社会保険庁叩きをやっていたが、長妻議員の国会質疑は熱心に取り上げようとせず、不正免除での社会保険庁叩きが一段落したら、年金報道のほとぼりは冷めてしまった。
 大手マスコミの体たらくの中、今に繋がる年金問題をもっとも熱心に取り上げていたのが夕刊フジである。当時はまだ小泉政権の時代であった。小泉純一郎という人間は極めてペテンで、過去の自民党政治がもたらした弊害であっても、それを否定することによって自民党政治負の遺産をすべて無にするどころか、すべて自らの手柄として加点とし高い支持を集めたのである。
 小泉であれば、年金問題が過去の政権の負の遺産にもかかわらず、それを無にして自分の加点にできたかも知れない。郵政選挙の余韻がただよっていた当時において、産経新聞はむしろ自民党におかずを送り、「これでポイント稼ぎなよ!ついでに労組潰しちゃいなよ!」と願っていたのかも知れない。
 ところが小泉という人間は、自分の興味のない分野はことごとくスルーする男で、そのまま官邸を去ってしまった。
安倍総理小泉内閣官房長官であったのだから、当然この問題の重大さは知っているはずである。ましてや社労族の安倍が理解していない訳はない。彼はマスコミが騒いでいないことをいいことに問題を先送りしようとしたのである。何しろ彼には首相になったらやりたいことがいっぱいあるのだから。
 世論が年金問題安倍総理に対して厳しい目を向けるのはむしろ当然の話なのである。彼は知ってて店晒しにした確信犯なのであるから。